妻にすっかり荷造りしてもらい十数年暮らしたマンションを出た。手には小さなボストンバッグ一つ抱えているだけだ。その気楽な姿は、離婚などという深刻な事態を連想させないようだった。通路で擦れ違った顔見知りの老婦人から「あら!どこかにご出張?」な…
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