「天狗ー?」
健太が高い声を上げ露骨に驚いて見せた。
「馬っ鹿じゃねえの」
健太の声に呼応して何人かが苦笑した。いや、嘲笑と言う方が正確だった。ゲームが一段落し、みんなが世間話を始めたところだった。僕が由紀に小山の神社に連れて行かれたこと、参道の入り口で逃げて来たことを話したのだ。
「由紀ちゃんが『天狗が出る』なんて、何かあったのかな?」
真人が言うと別の何人かが「真人は由紀ちゃんが好きだからなあ」とからかい、真人が頬を紅く染めながら「違うよ!」と言い返した。が、真人へのからかいは簡単には終わらない。「マーちゃんってば、授業中だって由紀ちゃんのこと見てボーっとしてるぜ」とか「この間も由紀ちゃんに話しかけられたらキンチョーして返事できなかったんだぜ」なんて言われてた。真人は怒って真っ赤な顔をしていたが、反論はしなかった。きっと事実なのだろうと僕は思った。
「さあ、みんなおやつにしましょ」
淳司の母親が大き目の盆にケーキと紅茶を乗せてやってきた。お陰で真人をからかいのは中断となった。
「でも、まさか本当に天狗が出るなんてこと無いと思うけど、由紀ちゃん一人で大丈夫かな?あの辺りって人通りが少ないじゃん」
「そうだな。それにその髭おじって怪しいんだろ。何かの罠だったりして」
「まさか」と僕は否定してみたものの、すぐ不安になった。まさか由紀が髭おじにさらわれるということもあるまい、第一、髭おじがさらっても、連れて行くとすればすぐ近所の家なのだ。しかし、考えれば考えるほど不安は募った。だいたい今日の由紀はいつもの由紀と違っていた。テレビドラマやマンガではいつもと違うことがあると、必ず事件が起きる。現実の世の中にはそうそうドラマは転がっていないだろうと思ったが、それでも嫌な予感がした。
「おれさ、ちょっと行ってみるよ」
僕はそう言うと立ち上がった。いつもは囃し立てる悪友達が真面目な顔で頷いた。皆、僕と同じ様な不安に駆られているようだった。
 慌てて階段を降りると、ちょうど淳司の母が登って来ようとしていたところだった。
「あら!卓ちゃん。もう帰るの?いま、果物を持って行こうと思ったのに」
僕は淳司の母に頭を下げ、靴を履いた。
「何か急用が出来たのね。じゃ、これ持ってって。二つ上げる。両方のポッケに入れてね。いつも一緒のお姉さんにもあげて」
淳司の母はそういうとバナナを二本僕に差し出してきた。この人はいつも由紀を僕の姉と勘違いしていた。でも、今そんなことを訂正している暇は無い、と思った僕は「ご馳走様」といい、ありがたく二本貰ったバナナを左右のポケットに一本づつ押し込んだ。
「気を付けてね」
淳司の母に、僕はもう一度頭を下げ走り出した。


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