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※テレビ版の「のだめカンタービレ」の続きを勝手に書いてみました。
(所謂二次小説で、本物とは一切関係ありません)
ジャンの言葉が伸一の頭の中をぐるぐる回り始めた頃、主賓席のテーブルではシュトレーゼマンと雅之の言い合いが再開していた。
「雅之!貴様は女性としゃべるんじゃありませーん。オンナと喋るな!かー!」
「うるせえジジイだな。俺が喋りたくて喋ってんじゃねえ。オンナの方から寄ってくるんだから仕方ねえだろ」
「きー!今日の!今日の主賓は私、私シュトレーゼマンですよー!なんで!なんで貴様がモテる!?」
「ま、格好いいから仕方ねえなあ。それよりさっきから主賓、主賓って騒いでるが、名簿の一番上に載ってるってだけだろ。だいたいあれな、いっつもそうだがまず指揮者から書くんだよ。あれっておかしいよな。一番上が主賓だっていうなら、音楽性の高い人間から書くべきだぜ」
「な!貴様、私が音楽性一番では無いと言いたいのですか?」
「ああー、まあ一番では無いな。何故なら一番は俺だからだ。あんたは二番にしといてやろう」
「ノー!ノー!チアキマサユーキ!殺す!貴様、音楽界から抹殺!」
まったくノー天気な奴らだ、と伸一は舌を鳴らした。周りのことなどお構いなし、いつも自分中心で世界が回ってる、そんな人格の低い連中がなんで巨匠なんだ?
「ほんと失礼な奴でーす。OH!だからせっかくお土産に買ってきた羊羹もあーげません」
そう言うとシュトレーゼマンはめぐみから受け取った風呂敷包みの結び目を解き始めた。
「雅之!貴様の好きな桝一堂の栗羊羹なんですがねー」
「げげ!桝一堂の栗羊羹だと!」
「ほほほ、大好物ですねー、でもあげませーん」
「そんな、卑怯者!」
「なんと言われようと結構でーす。絶対あげませーん。ただーし今日の非礼を詫びたらあげてもいいでしょー」
「うう、くそー。どーする?」
おお、なんというレベルの低い争いなんだ、と伸一が驚きながら二人の様を眺めている間にシュトレーゼマンが結び目を解き終わった。そして風呂敷包みから現れた黄金色に輝く鉄製のブリキ缶の表面を指で叩きながらリズムを取ってみせたのだ。
「くそー、分かったシュトレーゼマン。俺が悪うございました」
「分かればいいのでーす」
そう言うとシュトレーゼマンは風呂敷ごと羊羹を雅之に渡した。貰った雅之は馬鹿みたいに嬉しそうな顔をして鉄製の缶の上から匂いを嗅いでいた。
『缶の上から匂う訳ねえだろ!それにしても、なんだあいつら仲良しなんじゃねえか!』
伸一は呆れながら自分のすぐそばに視線を移した。そこにはめぐみがいた。めぐみは何人もの演奏者たちに囲まれていたのだ。いずれも名のある人ばかり。めぐみは一人一人から握手を求められ、手を握り返していた。その時、伸一の心の中に一抹の疑問が浮かび上がった。
『その上めぐみ・・・?』