※テレビ版の「のだめカンタービレ」の続きを勝手に書いてみました。

(所謂二次小説で、本物とは一切関係ありません)



雅之が腕を組んだ、その瞬間幾つものバネがギ、ギュウウウ、ギギギ、キコキコと軋んだ。伸一は即座に「知りたくねー」と言ったのだが、雅之はそんな言葉を無視して誇らしげにその名を呼んだ。

「超・超絶技巧養成ギブス!」

その名にめぐみが驚嘆し、

「おお!」

と唸り声を上げた。

「このお陰であのリストを倍のスピードで弾けるようになったんですね!」

「まさゆーきは、これで大リーガー並みのパワーを培ったのでーす!」

突然背後から現れたシュトレーゼマンが叫んだ。

「凄ーい!だったらホームランも打てるんですかー!?」

めぐみが感動して飛び跳ねた。

「阿呆か!貴様ら!大リーガーにピアノが弾けるかよ!」

「Oh!伸一ったら洒落が利きませんねー」

「ったく相変わらず空気読めねえ奴だな」

「な、なんだ?まるでオレがいけないみたいじゃないか!」

「おい伸一。これはな、ものの例えだ。おまえに分かりやすいようにな、わざわざ用意したんだよ」

「そんなことの為にわざわざ買ってきたのかよ!」

「ふふふ、そうやっていつまでーも負け犬の遠吠えやってなさーい」

「ま!負け犬?オレが負け犬?」

「だって、俺たちの演奏が理解出来んだろ」

「う!」

伸一は言葉に詰まった。たしかに、こんな演奏初めてだし、今まで勉強したこと無いんだ。

「さ、めぐみちゃん。我々と一緒に行こう。君には私がマンツーマンでレッスンしてやる」

雅之がめぐみの手を取り歩き始めた。

「でもー、オクレール先生が・・・」

と戸惑うめぐみに

「おー!オクレールか。そうだ、そうだったね。でも大丈夫。これをご覧」

雅之がポケットから取り出した封書を開けると中から手紙を取り出した。

「あー!オクレール先生の字だー!」

「雅之に教えて貰いなさいって書いてある」

そう言われてめぐみはうんうんと首を縦に振って納得してしまった。伸一は慌てて

「おい、のだめ!」

と名を呼んだが、雅之の話に夢中でまるで聞こえていないようだった。

「私が徹底的に特訓してあげよう。君が世界最高のテクニックを身に付けるまでね!」

「おー!望むところです。お父さん!」

なんて勝手に盛り上がってしまった。気付くと雅之はすっかり着替えを終わっていた。黒いスーツに黒のコートを羽織っていた。まるでホストクラブの黒服じゃないか!と伸一が首を傾げている間に雅之とシュトレーゼマンはまるでホストがエスコートするようにめぐみを挟んだまま出口に向かった。

「おい!お前ら!のだめをどうする気だ!おい!答えろ!」

伸一の声を無視したまま歩き続けていたが、巨大なガラス張りのドアの前まで来たところで突然、三人が振り返った。