※テレビ版の「のだめカンタービレ」の続きを勝手に書いてみました。

(所謂二次小説で、本物とは一切関係ありません)



「おい!のだめ。行くな!こっちへ戻って来い!」

「嫌ですよ。私は世界最高のピアニストになるんですから」

「へ?何言ってんだお前!?気は確かか?」

「失礼ですねえ先輩!私じゃなれないって言うんですか?」

「いや、そんなこと無いけど」

「だったらいいじゃないですか。お父さんに特訓して貰うんですよ。これから毎日」

毎日?そういえばプラハ演奏家協会主催のパーティーの夜、「俺ならあいつを一級品に育ててみせるぜ。ピアニストとしても・・・女としても」なんて言ってた。女としてってどーいう意味だ!どーいう特訓する気なんだよ!くそ!あのエロおやじめ!そんな伸一の不安を雅之が更に掻き立てた。

「ふふふ伸一。安心しろ。オレがたっぷり特訓してやる」

なんだ!「たっぷり」って!?ちょっと響きがいやらしいぞ!

「ふふふ、さあ特訓だ。特訓、特訓。楽しい特訓の始まりだー!ふ、ははははははー!」

雅之が高らかに笑った。そしてめぐみの肩に手を回し

「ようこそ!虎の穴へ」

と叫んだ。な、な!タイガーマスクか、貴様らは!と伸一が呆れているとシュトレーゼマンもそれに呼応して叫んだ。

「シリのアナルへヨコーソ!」

巨大なガラス張りのドアを開けゼーマン記念ホールを出ると巨大なロータリーに黒塗りのリムジンが停まっていた。三人は伸一を振り返りもせずそこに乗り込んだ。

「おい!待て!どこへ行くんだ!おまえらどうかしてる!おい!のだめ!降りろ!」

しかしリムジンは音も無くアスファルトの上を滑るように発進した。思いも寄らぬことに伸一は呆然と見送るしかなかった。

「いったいどうなってるんだ?」

自問しても答えは見付からなかった。突然、伸一は立っていられないほどの疲労感に襲われ、地面にしゃがみ込んだ。まだ父の、シュトレーゼマンの演奏が続いているかのような錯覚に襲われた。両手で耳を塞いでみるが一向にその音楽は止まなかった。伸一は観念したように石造りの歩道に仰向けに倒れ込み真っ暗なプラハの空を見詰めた。