※テレビ版の「のだめカンタービレ」の続きを勝手に書いてみました。

(所謂二次小説で、本物とは一切関係ありません)



エッフェル塔凱旋門モンサンミシェルノートルダム寺院サクレクール寺院、サント・シャペル教会、ルーブル美術館オルセー美術館、ベルサイユ宮殿、サンジェルマン・デ・プレ、、、、しかしこいつらよく喰うな!出店(でみせ)があるたびになんか食い物を買ってやがる。観光なんだから少しは施設をみたらどうなんだ?伸一は半ば呆れて面々を眺めた。

「おいー!千秋。幾らなんでも詰め込み過ぎだー!」

峰がぽっこりと飛び出た、間違いなく喰い過ぎの腹を抱えて叫んだ。

「そうだよ千秋!一日でパリの観光地全部回ろうなんて無理があるぞ!」

玉木の奴も、自分の好きで喰ってるくせしてなんでオレに文句を言う?

「ああ、俺、もう喰えねえ。腹が破裂する!」

橋本もか、、、、桜や真澄、萌、薫、大河内まで腹を抱えて苦しそうに、、、おいおい、誰が片っ端から喰えって言ったんだよ!行く先行く先で勝手に買い食いしてんのはおまえらだろ!

「まあまあみんないいじゃねえか!俺たち、滅多にパリなんて来れねえからよ。千秋が気を使って目いっぱい案内してくれてんだよ!感謝しようぜ!」

「そうよ、ありがとう千秋様!」

峰、真澄、、、ふふ、まったくこいつらのだめと一緒だ。単純で、屈託無くって、でも自分に正直で。まあ食欲には正直過ぎるが、、、こいつらの音楽が楽しいのはこういうところから来てるんだろうな。サンジェルマン・デ・プレの下町のような通りで両手に食い物を抱えて歩く皆の姿を眺めながら伸一は、のだめが初めてパリに来た日のことを思い出していた。まるで右も左も分からずに、ただはしゃぎ回っていたくせに、いつの間にかすっかりヨーロッパの音楽に溶け込んでしまった。あいつの音楽を理解できるのはオレだけだ、みたいに思ってたけど、オクレール先生はじめ一流の人たちはすぐに見抜いてしまった。そう考えて伸一は天を仰いだ。そう、あいつもその一人。のだめの才能を見出したんだ。伸一の脳裡に真っ黒なマントを羽織った父の姿が現れた。音楽家とは縁遠いその風貌、浅黒い肌に筋骨隆々の手足、鋼のような体躯、鋭い眼光。まるで野武士なんだが、タキシードとのミスマッチが妙な魅力を醸し出すらしい。特に女どもには堪らないらしい。まさかのだめもあいつの魅力に篭絡しちまったんじゃ・・・・「女としても・・・育ててやる」伸一の脳裡に雅之の意味深な言葉が蘇った。

「千秋!どっか居酒屋ねえのか!?居酒屋!?」

峰の叫びが伸一の心を現実に引き戻した。

ライジングスター、パリ上陸のお祝いだー!!」

峰が拳を天に突き上げると他の皆も

「おー!」

と気勢を上げた。ったく、日本にいる時と変わらねえじゃねえか、パリに居酒屋って、、、

「あった!あったぞー!日本の居酒屋と一緒だー!」

突然、大河内が指差して叫んだ。

「日本の居酒屋のチェーンみたいよ」

ま、まじか!?伸一の予想を大きく上回る勢いでグローバル化は進んでいるらしい。目の前には日本語で居酒屋と書いてある巨大な看板を掲げた店が口を開いていた。


「さすがパリの居酒屋だけあってお洒落だな」

「ほんと、畳だったらどーしようと思っちゃった」

しかし日本にいる時と同じように酒盛りが始まった。こいつらパリに来た価値あんのか?と伸一は思ったが、それが彼らの長所でもあることを良く知っていた。こいつら人生の楽しみ方を良く知ってるんだ。それは音楽の楽しみ方と変わらない。日本にいた頃それを一番教えられたんだ。伸一はライジングスターオーケストラの、そしてその前身になったSオケの演奏を思い出していた。

ベートーベン 交響曲7番

が心の中に響き渡った。題名の無い音楽にこいつら自分たちで題名を付けようとでもいうように無茶苦茶な演奏しやがった。ふふふ、なんだかレベルは低くて馬鹿みたいだったけど我ながらいい演奏だったな。あそこから始まってオレもこいつらも自分でも知らぬ間に成長してきたんだ。

そういえばライジングスター・オーケストラは今、どーなってるんだ?ヨーロッパへ来るため、オレが指揮者をやめ、その後を音楽評論家の佐久間から紹介された松田幸久さんにお願いしたんだ。松田さんはパリのルセール管弦楽団を指揮した人だ。日本のMフィルの指揮しながらといっても十分な指導はして貰える筈。

「なあ峰、ライジングスターはどーなってる?」

「どうなってるって?どーいう意味だ?」

「意味って、ちゃんとやってるかってことだよ」

「なんだ、そんなことか」

ほろ酔い加減の峰がへらへらしていると玉木、橋本の二人がにやにやしながら

「最高だよなー!この間のコンサートだって大入り満員」

なんだか嫌味な言い方をするな、と伸一が感じると峰が突然真顔になった。

「千秋には悪いけど松田さんは素晴らしいよ」

悪いけど、って何だよ?別になにも悪いことなんてないじゃないか?千秋は困惑した。

「千秋くんも好きだけど松田さんも好きだ」

高橋が叫んだ。ああそれは良かったな。

「でも千秋が必要なくなった訳じゃねーからさ。気にするなよ」

なんで落ち込まなきゃいけないんだよ。オレはただ自分が創ったライジングスターが心配で、、、

「やだ!みんなRSは永遠に千秋様のオケよ!」

真澄!変に庇うなよ、、、くそ!