※テレビ版の「のだめカンタービレ」の続きを勝手に書いてみました。

(所謂二次小説で、本物とは一切関係ありません)



「おい千秋!クレーぞ!飲め!ほら飲め!」

という峰の声が耳元で聞こえた気がした。伸一はそこから先をよく憶えていない。気付くと深夜の石畳を歩いていた。雨が降ったのか少し道路が濡れていた。濡れた石畳が街灯の光を反射し、歩く先を見えにくくしていた。オレどっちへ歩いてんだろ?こっちでいいんだよなオレのアパート。アルコールが回り回転が鈍った脳の片隅に、へべれけに酔ってホテルのカウンターで自分の部屋の鍵を受け取る峰たちの姿が浮かんだ。そうか今しがたあいつらをホテルに送り届けたんだよな。酒は強い方なのに、こんなに酔ったのはいつ以来か?そうだな、いつだろう?ぼんやりと星を眺めながら記憶を辿った。そっか、アレ以来だ。アレとは二年近く前、伸一が大学四年の時だ。飛行機恐怖症が原因でヨーロッパに留学できないストレスから自暴自棄になり、当時、恋人だった彩子にフられ、飲んだくれてアパートの前で意識を無くしたんだ。その時のだめに拾われたんだ。あんな変な奴が隣の部屋にいるなんて知らなかった。

ふふふ、そののだめに今度は捨てられちまった。オレはいつの間にかオレがあいつ飼ってるみたいな気になってたが、考えてみれば出会った時からあいつがご主人様だったのかもな。オレは拾われた子犬みたいなものだったのかもしれない。あーあ、オレって馬鹿だよなー・ふー、それにしても飲み過ぎだ。ああ、吐きっぽいや、、、、ふふ、

つぃー、つ、つ、つ、うぃーっ

ん?何の音だ?機械音?どこかで聞いた。間違いなく聞き覚えがある、けど思い出せない。飲み過ぎて思い出す気力が無い。ま、いいっか。

つぃー、つ、つ、つ、うぃーっ

う!またか。うーん、なんだか今日、聞いたばかりのような気がするんだが、どこだったか?まあいいか。

それにしても、、松田さんってそんなに優秀なのか?、、でもオレは全然嫉妬なんかしてないのに、、なんでみんな変な気を回すんだ、、いや、でもどうなのかな?本当は少し悔しいのか、、、悔しいのかどうか分からないけど、やっぱりちょった淋しい、、、もともと一人がいいって思ってた筈なのに、誰からも必要とされなくなるって淋しいもんだな、、、のだめにも、、、エリーゼ、、シュトレーゼマンにも、、、オケのみんなにも、、、ああ、オレって必要の無い奴なのかな、、いいやもう、、そんなことどうでもいい、、、それ以上に、、ああ眠い、、瞼が重い。あ、脚に力が入らなくて、ああ、ダメだ。歩いてられない。でも、ダメ、こんなとこで寝ちゃ、、だって道路だろ、、、ああ、でも冷たい、、、冷たくって気持ちいい、、眠い、、ぐ、ぐー、、、、、、あ?誰?誰なんだ?足?女の足?のだめ?なんでここに、、、?

「ベロベロね。情けない」

のだめのくせに随分と偉そうな口利くじゃないか、と伸一が思う間に、腕を掴まれて引き摺られ始めた。う〜ん乱暴な!こんな乱暴な奴だったのか?と首を傾げ、顔を覗き込もうとした瞬間、路肩の石のモニュメントに後頭部をぶつけて意識を失ってしまった。


ガーガガガガーガガガガ

「おー、これはまずい!まずいぞー伸一」

「むきゅー!先輩!気を確かに!早く目覚めて、逃げて下さーい!」

「のだめちゃーん!見てはいけませーん!男にこういうことがままあるんでーす!」

「うるさい!静かにしていて下さい!」

「あ!ああ!あいつら入ってちゃったよー。ホテルにさあ。まずいよこれは!おーいい、もしもし、聞こえるかー!オリバー!あー、このまま追跡。できれば部屋の中まで」

「ああー!オリバー!止めて、先輩を助けて下さい!」

ガーガガガガーガガガガ