※テレビ版の「のだめカンタービレ」の続きを勝手に書いてみました。

(所謂二次小説で、本物とは一切関係ありません)



ガーガガガガーガガガガ

「むきゅー!」

「しんいーちったら、結局、朝まで出てきませんでしたねー」

「ううーむ。伸一のなかなかやるのー。アレだけの美人と・・・見直しちゃったなー」

「変なことで見直さないで下さい!」

「いやいや、嫁殿。息子を許してくだされい!芸を磨く為には仕方ないのでござる」

「なんて勝手な!私、こんな家にもういられません!」

「そこをなんとか!」

「二人とーも、そんなにしんいーちのことを疑ってんのですかー?私は疑ってません」

「うう!」

「間違いない。彼はやりまーした!はははは!」

「むきゅー!シドイ!」

「うーん、まあなあ。年頃の男女が、それもあれだけの美男美女が一つ部屋に一晩。何も無いの方がおかしい。病気だ。俺はそんな伸一の方が嫌だ」

「私は先輩を信じてます。絶対、何もありませんよ」

「なんで?」

「だって先輩、病気なんですもん。私が治療していた最中なんですよ」

ガーガガガガーガガガガ


彩子が覆い被さってきたのを伸一は感じていた。ああ気持ちいい、彩子ってこんなに気持ちよかったんだ。このまま身を委ねてしまおう・・・伸一は目を閉じると夢の世界に誘われた。暖かい海だ。その中にオレは浮かんでるのか?波に揺られて、気持ちいい。太陽が少しまぶしいけど、まあそのくらい仕方ないか、、ん?誰かパラソルを差してくれたのか?それにしても海に似合わない、黒いパラソル?というより傘かなあ?いや、、、、?黒いマント?

『ははは』

オヤジか!

『おげんこでーすか?婚約者を奪われ、事務所もクビになったというのに、余裕綽々でーすねー』

シュトレーゼマンもいる。くく!余裕なんてあるものか!苦しくって気が狂いそうだったんだ!それもこれもあんた達のせいだろ!

『せんぱーい、たしけてくだしゃいー。うえ〜ん』

ひ!のだめ!なんだその格好!?全身エキスパンダー!?例の超・超絶技巧養成ギブス!

『のだーめちゃん!もっともっともっと弾きなさーい!もっと速くー!もっと強ーく!』

『うえ〜ん、もう無理ですよー』

『がははは、もっともっと激しく鍵盤を叩け!叩き折るまで叩くんだー!』

『先輩助けてくださーい』

のだめの叫びに伸一は目を覚ました。のだめを探しに行かなきゃ!伸一は彩子を振り払い、立ち上がった。

「きゃ!」

彩子はベッドから転げ落ちた。

「いったーい!急に何すんのー?」

「だ、ダメだ。オレはのだめを探しに行かなきゃ」

「さっきやり直すって言ったくせにー!」

「ごめん、本当にごめん」

「いやよ!いやいや、ぜーったい嫌ー!」

叫ぶ彩子を残し、伸一は部屋を飛び出した。彩子、本当にごめん、でも、オレはやっぱりのだめじゃなくちゃダメなんだ・・・伸一はエレベータを待つ時間がもどかしくて、非常階段に飛び出した。街の真ん中に聳え立つ高級ホテルは摩天楼のように雲の中から突き出ていた。その非常階段は、バベルの塔の石段か、はたまたジャックと豆の木で天まで延びた豆の蔓か?いずれにせよ地表まで降りるには雲を通り抜け、遥か彼方まで駆け下りねばならない。伸一が意を決した直後、突然、足下の雲がうねり始めた。始め白かった雲は、次第に灰色が混じり、ついには真っ黒な渦巻きとなって伸一を飲み込もうと待ち構えているようっだ。しかし伸一は恐れを抱かず歩を進めた。神の怒りに触れた人間が地獄に叩き落とされるがごとく、摩天楼の非常階段を恐るべきスピードで駆け下りていったのだ。