※テレビ版の「のだめカンタービレ」の続きを勝手に書いてみました。

(所謂二次小説で、本物とは一切関係ありません)



オリバーと別れ、真一は自分のアパートメントに足早に向かった。やっぱりのだめを探しに行こう、でなきゃ駄目なんだ、やっぱりのだめでなきゃ。それには取り合えずあのコンサートを見に行こう。あのコンサートとは昨日フランクが忘れていったノートの間に挟まっていたチラシのコンサート。風林火山なんて恥ずかしい題名付けやがって!まあいい。たしか来週だった。とりあえずそれを見に行ってみよう。

そんなことを考えながら歩いているうち真一はアパートメントに着いた。ドアを開けると昨日のまま、つまりプラハから帰ってきた時のまま散らかり放題だ。はあ、なんだこれ?こんなのオレの部屋じゃない。それもこれもあいつらのお陰だ。真一の脳裡にシュトレーゼマンと雅之の狂ったような笑い顔が現れた。ああ!今はそんなのどうでもいい!取り合えず掃除掃除と!真一は猛烈な勢いで掃除機を振り回し、散らかった荷物をまとめ、代布巾で辺り一面を拭いた。お陰で三十分と経たぬ間に部屋中が美しく生まれ変わった。ふー、これで一安心。やっぱり美しい部屋は落ち着く。ちょっとCDでも聞くか。と真一はCDケースの中を覗いた。しかし一枚目も二枚目も三枚目も、ずっとシュトレーゼマンの演奏ばかり。くそ!あのジジイ。こんなところまで侵略しやがって!真一はCDケースごと叩き付けたい思いをなんとか堪えた。

それにしても、と真一は世の不条理を噛み締めていた。弟子の、あるいは息子の婚約者を誘拐した上に、気に入らないからと破門にし、更に部下に盗撮させるなんて、、、考えられない人格の低さだ、、、そんな奴らがなんで一流の音楽家なんだよ?世の中おかしくないか!?幾ら世の中おかしいことだらけっていってもオレは認めたくない、、、認めたくないんだ、、親父なんて、、くそ!・・・その時ドアの外で「ガチャン!」という大きな音がした。何かを落としたような音。誰かいるのか?真一は何かとてつもない予感に背を押され、飛び上がるようにしてドアの前に立った。すかざずドアを開ける。そこには誰もいなかった。しかし、床にはCDが落ちていた。これがさっきの音の原因に違いない。その時、目の片隅に階段を駆け下りていく影が見えた。慌てて追い掛けたが、影の方が一瞬早くアパートメントの外に飛び出して行ってしまった。

『間違いない。のだめだ・・・』