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※テレビ版の「のだめカンタービレ」の続きを勝手に書いてみました。
(所謂二次小説で、本物とは一切関係ありません)
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成田行きのゲートが開いた。
「じゃあな千秋!俺らはこれで帰るけど、気を落とすなよな」
ああ峰、分かってるから余計なこと言うなよ。
「のだめちゃん、きっと帰ってくるよ。心配しないで」
桜、おまえが言うから余計心配なんだよ。
「のだめだけじゃなくって私まで居なくなってしまいますが、千秋様!淋しがらないで下さい!いつでも電話しますから。Skypeならお顔も見れます」
ああ、真澄。おまえの顔はそれほど見たくないから大丈夫だ。
「千秋君がチョアヘヨ!あ、これ韓国語だった。千秋君がジュ・テーム!」
はいはい、高橋君ご苦労さん。
「千秋様、日本に帰ってからもずっと応援してますから」
萌、薫、ありがとう。
「ふふふ千秋、凡庸な男たちの苦しみを今こそ思い知れ」
玉木、橋本、ありがとう、おまえ達こそ真の友達かもしれないな。
「千秋。ライジングスターの未来は僕に任せて、ゆっくり欧州で修行してきたまえ」
安心しろ大河内、おまえには永久に頼まないから。
二泊三日なんて短い滞在だ。まるで嵐のように訪れて嵐のように去っていくって感じだな。みんな相変わらず元気で羨ましい。オレも早く立ち直りたい。飛び立つ旅客機を見上げながら真一は溜息を付いた。それにしても・・・真一は昨日、峰が言った言葉が気に掛かった。
「苦痛と快楽を同時に味わわされてるみたいでやめられなくなりそうだったよ」
と峰は言った。
「どんな演奏だったのかまったく思い出せねえけどよ。なんだかとっても切なくって、悲しくって、でもなんていうか懐かしくって、、、なんなんだろうな?自分が一番大変だったてーか、一番本気だったことばっかり思い出しちまうんだよ。でさ、苦しいんだけどもう一度、もう一度聞きたいって思っちまう」
その通りだよ峰。そうなんだ、まるではらわたをえぐられるように一番大切な記憶を引きずり出されてしまうんだ。多分、聴衆はみんなそうなんだろう。そしてその記憶は苦痛であるとともにノスタルジーという快楽をももたらすんだ。まるで麻薬だな。その時、真一の中に再び閃光が走った。う!またあのフラッシュ。なんだっていうんだ!あの部屋。プラハでマルチナに案内されたあのピアノ練習室で、ピアノの前に座っているオレ。でも弾いてない。なぜ?なぜ弾かない?うう、、なんだか指先が痛くなってきた。なんなんだ?
グオウ!
という峰たちを乗せた旅客機のエンジン音で真一は我に帰った。 それはまるで旅客機が上げた雄叫びにも聞こえたし、峰が悪い妄想を断ち切ってくれたようにも感じた。パリで行う親父のコンサートまで何も考えないでおこう、、桜の情報によればそのコンサートでものだめが前座を務めるらしいから、上手くいけばその時のだめと再開できる。いろいろ悩むより勉強、勉強。エリーゼからクビを言い渡されてしまったから、早く他の事務所を探さなきゃならない。その為にも勉強してレベルアップしておかなきゃ。よく考えてみれば悩んでる暇なんて無いんだ。真一はクルリと踵を返すと足早に歩き始めた。