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※テレビ版の「のだめカンタービレ」の続きを勝手に書いてみました。
(所謂二次小説で、本物とは一切関係ありません)
戸惑う真一にこう語り掛けた。
「日本人だね?千秋雅之と同じ日本人だ。彼は天才よ。彼が来るたび私は聴きに行く。聴く度に彼は進化しているわ。去年聴いた時、殺されるのかって思ったものよ。だって子供の頃から今までの悲しいことから楽しいことまで全部思い出させてくれたんだもの。走馬灯のようにって奴よ。人間、死ぬ直前にそういうこと全部思い出すって言うでしょ・・・」
お喋りに反応できぬ真一に気付き、中年女は話をやめた。
「余計なこと言ったわね。なんだかあなた千秋に似てるようで、、、日本人ってみんな似て見えるのね。ストイックな、音楽の求道士のように」
ストイック?奴が?な訳ないだろ。思わず真一は睨み付けてしまった。慌てて首を振り、敵意が無いことを伝えようとする、と中年女はほくそ笑みながら訊ねてきた。
「あなたも音楽を?」
「ええ、少し」
「そう、頑張りなさい。なんだかとっても才能がありそうに見えるわ」
「そんな、ことありません」
真一は遣り取りの後、急ぎ財布を取り出した。
「あの、一枚下さい」
「ああ、はい」
突然、中年女性の口調が事務的なものに戻ったことで真一は何故かほっとした。
夕暮れのパリには少し風が吹き始めた。真一は胸ポケットから何度もチケットを取り出しては、中を確認した。のだめは何を弾くのかな?ふとそんなことを思った。そもそも雅之の音楽とのだめの音楽はまるでタイプが異なる。そんな二人が師弟になって何を演奏しようというんだ?真一はチケット売り場の並びのファーストフード店で買ったコーヒーに口を付けると酷く苦い味がした。