◇帰郷◇
 どうやら眠っていたらしい。夢を見ていたのだ。しかし、それは夢というより記憶だった。遠い昔の記憶、すっかり忘れていた子供の頃の出来事が今頃思い出されたのだ。もっとも、私がこれから向うのは故郷である。高校を卒業して以来、一度も帰ったことの無かった故郷にこれから帰ろうとしているのだ。その為にこんな夢を見たのかもしれない。
 故郷に帰るといっても、Uターンしようというつもりは無い。ただ、居場所の無くなった今、久しぶりに懐かしい土地を見てみたくなったのだった。父にも、高校の卒業以来会っていない。人づてに聞いた話ではずっと警備員の仕事をしていたが、六十五の歳に脚を患いそれからずっと老人施設に入居しているという。気が小さくて、気が短くて僕にとっては情けない父だったが、自分も父親になって何年も経つ今、父の色んなことを許せる気持ちになっていた。
 新幹線の車窓から眺める風景は、四角いコンクリートのビルが林立する都会の景色からトンネルをくぐるごとに土が形づくる柔らかな曲線に変化していった。ずっと以前ここを通って都会へ出た時は丸一日掛かったものだが、新幹線が出来た今は二時間も掛からないのだ。これから降り立つ駅も見知らぬ容貌に違い無い。かつて私が乗り去った駅は、巨大でこそあったが木造の古い建物だった。
 私は、つい昨日家族と別れたのだ。正確に言うと妻と娘が我が家を出て行った。
 我が家と言っても貸しマンションだから、いずれは引き払い返却する約束の他人の所有物だ。妻と娘も、まるでそれが初めからの契約とでも言うように私の元を去って行った。
「まったく、最後の最後までわたしがやってあげないと何も出来ないのかしら?」
妻が呆れたように言った。それを背中で聞きながら、私は窓の外を眺め続けていた。
 窓の外にはさながら北の果ての都市のように凍てついた景色が広がっていた。ビルも道路も真っ白な雪や氷に覆われている。しかしそれらは都会の汚れを全て覆い隠したかというとそうではなく、それらが剥げ落ちた個所から覗く黒い汚れを一層引き立たせる役割をしているだけだった。
 何十年かぶりの大雪はこんな都会にも冬の厳しさをもたらした。しばらく前からテレビや新聞が景気は回復したと言い続け、お陰で物価が上がっていた。何年ぶりかで買った灯油は驚くほど高かったし、冬物の衣類の値段には目を丸くした。誰もがそれらを事も無げに買って行くというのに、私は財布の中身と相談し、それが一段落すると今度は貯金の残高を頭の中に思い描いた。そうしてようやく、十日分ばかりの灯油を買ったり羊毛入りの下着を買うのだ。それらが無ければ生きていけないほど寒いということが分かっているのに、そんな必要最小限の生活必需品を買うのにも窮する自分に、自分自身心底驚いていた。

&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&
=当社広告掲載ブログ=
「ストーカー」連載中
「りふれいん」連載中
&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&&

<広告>
平凡な保険営業マンが年収800万円を獲得する法を知りたくありませんか?
[保険営業マンを支援するサイト⇒保険営業マンのニュースレター作ります。]
売上アップにつながるホームページ書きます。
[保険/年金/老後の資産形成]

健康な暮らし研究所
ブーツを買った方!臭い対策にこの一本。画期的な消臭スプレー
健康な農産物をご購入
発毛剤を超えた育毛トニック:慶応大学医科学センターの団先生が考案した「ダンサージ」
TVショッピングで3億円売れた「ダニ退治シート」
『ドッグスタイル臭ワン!』ペットの体臭を消す
[アトピー、アレルギーに空気が綺麗になる自然炭塗料を使ってみませんか?VOCの吸着力が他の炭の3〜8倍ある多孔質カーボンを使用しています]